2017年09月10日

労働保険事務組合とは

お客様と面談の際に、労働保険事務組合に加入している、という話を聞くことがあります。
「何のために加入されたのですか?」と質問すると、「よくわかりません」という方が
ほとんどです。
では、この「労働保険事務組合」とは何なのでしょうか?






◯労働保険とは
まず、労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」の総称のことです。
労働者を雇用している場合、人数や規模に関わらず、必ず加入しなければなりません。
(雇用保険は雇用期間が31日以上かつ労働時間が週20時間以上の労働者がいなければ
加入義務はありません)


◯労働保険事務組合とは
労働保険事務組合は、事業主の行うべき労働保険の事務を処理することについて、
厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体です。
一般的には、事業協同組合、商工会議所等が認可を受けています。
また、昔からある社会保険労務士事務所が、労働保険事務組合を併設しているところも
多くあります(認可の基準が厳しくなったため、今は個人の社会保険労務士が新たに
認可を取るのは難しいようです)。

1.労働保険事務組合の業務
労働保険事務組合が取り扱うことのできる業務は以下のものとなります。
・概算保険料、確定保険料その他労働保険料及びこれに係る徴収金の申告・納付
・雇用保険の被保険者資格の取得及び喪失の届出、被保険者の転勤の届出その他
 雇用保険の被保険者に関する届出等に関する事務。
・保険関係成立届、労災保険又は雇用保険の任意加入申請書、雇用保険の事業所設置届等の
 提出に関する事務。
・労災保険の特別加入の申請等に関する手続。
・その他の労働保険についての申請、届出及び報告等に関する手続。

労災保険や雇用保険の給付事務、助成金に関する事務は取り扱うことができません。
従業員が勤務中に怪我をした、と連絡をしても、対応してもらえません(というか、認可を
取り消されるリスクを負ってまで対応するほうがおかしい話です)。
であれば、社会保険労務士と顧問契約を結んで全て任せた方が会社としては楽ですね。

2.労働保険事務組合に委託できる事業主
事業を営んでいれば、誰もが加入できるかといえば、そうでもありません。
(1)労働保険事務組合たる団体の構成員となっている事業主
(2)労働保険事務組合たる連合団体を構成する単位団体の構成員となっている事業主
(3)その他の事業主であって、労働保険事務の処理を委託することが必要と認められるもので
   あって、事業の種類に応じて常時使用する労働者の数が次の規模以下のもの(労災保険の
   中小企業特別加入の要件と同一)
  ・金融業、保険業、不動産業、小売業の場合は、常時50人以下。
  ・卸売業、サービス業の場合は、常時100人以下。
  ・その他の業種は、常時300人以下。

3.労働保険事務組合に委託するメリット
労働保険事務組合に委託することで得られるメリットは以下のものとなります。
・労災保険の特別加入
 役員の場合、原則として労災の適用対象外となりますが、特別加入という制度によって
 労災の適用対象とすることができます。特別加入するためには、労働保険事務組合に
 委託している必要があります。

・労働保険料の延納
 労働保険料は、概算保険料が40万円以上でなければ分割納付することができません。
 しかし、労働保険事務組合に委託している事業所に関しては、金額は関係なく、
 労働保険料を分割納付することができます。

これ以外のメリットはないため、役員に労災は必要ないという会社、労働保険料の分割の
必要はないという会社は、会費を払ってまで労働保険事務組合に委託する意味はないと
言えます。

4.労働保険事務組合に委託すべき会社は?
役員に労災を適用させたい(例えば、建設業で社長が現場作業する等)会社です。
それ以外にありません。
40万円未満の労働保険料の延納をするために会費を払うのは本末転倒でしかありません。

5.労働保険事務組合への委託義務
「労働保険事務組合へ委託する義務がある」というような営業を受けたという声を聞いたことが
ありますが(「労働保険の加入義務」を「労働保険事務組合への委託義務」と受け取っただけの
可能性もあります)、そんなことはありません。
社会保険労務士事務所が併設している労働保険事務組合に関しても、委託する義務はありません。
ただし、労働保険事務組合への委託するためには社会保険労務士と顧問契約を交わしている必要が
あるケースは多い(逆はありません)ようです。
もし、社会保険労務士事務所から、必要もないのに併設している労働保険事務組合への委託を
強く勧誘されるようであれば、違う社会保険労務士に変えた方が良いとも言えます。

6.労働保険事務組合側のメリット
労働保険事務組合は、報奨金というものを受け取ることができます。
これは、常時15人以下の労働者を使用する事業の事業主の委託を受けて納付した前年度の
労働保険料の額(督促を受けて納付したものを除く)の100分の2に、厚生労働省令で定める額を
加えた額(ただし、上限1,000万円)であるため、委託事業主を増やせばそれだけ多く受け取る
事ができるということです。


専門分野は、知識がないと必要のない契約をしてしまう等、難しい面があります。
少しでも不審に思うことがあれば、その分野の専門家(今回の例でいえば社会保険労務士)に
聞いてみるのが良いと思います。
一般的には、各士業はつながりが多いと言われていますので、直接の知人がいない場合でも、
弁護士や税理士等に紹介してもらうという方法もあります。
posted by 気まぐれなFP at 11:37 | マネー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
スポンサードリンク
にほんブログ村 その他生活ブログへ
にほんブログ村