2017年10月01日

業務領域(税理士と社会保険労務士)

独占業務を行うことのできる資格を持っている人達の間でも、業務領域の侵害ということで
揉めているケースがよくあります。
FPには独占業務はありませんが、税金に関する相談に乗る際は「所得が500万円の場合は〜」と
いった形で、事例として話をすることしかできません(税理士法違反になるため)。

不動産会社等が業務内容として「税務相談」と謳っている広告を見たことがありますが、
税理士法に抵触する可能性が高いのではないかと思います。
「社内に税理士がいる」と抗弁するケースがあるかもしれませんが、税理士は登録していなければ
税理士と名乗ることはできませんし、開業税理士か税理士法人でなければ税理士としての業務を
行うことはできませんので、そのようなことを言う会社は信用しない方が良いでしょう。
(補助税理士はそもそも自分の名前で業務を受けられません)

さて、今回は税理士と社会保険労務士の間での業務領域について書こうと思います。






税理士と社会保険労務士の、個別の業務内容についてはここでは割愛させていただくとして、
業務内容が重なっている部分で、過去(今も?)トラブルとして聞いたことのあるものは
1.年末調整
2.労働・社会保険手続き
3.給与計算

が、主なものとなります。

1.年末調整
会社としては、給与計算を税理士または社会保険労務士に依頼している場合、そのまま年末調整も
お願いしたくなるものと思います。
実際、税理士と社会保険労務士の業界の間で過去に何度もやり取りされていたようです。

調べてみると、平成14年に日本税理士会連合会及び全国社会保険労務士会連合会の間で
「付随業務の範囲に関する確認書」というものが取り交わされ、そこには
「年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が
当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反すること」
と、明記
されています。

ということは、社会保険労務士は年末調整を行ってはいけないということは明らかに思います。
では、なぜ年末調整を行う社会保険労務士が入るのでしょうか?

平成27年に全国社会保険労務士会連合会が発行する「月刊社労士」という会報誌において、
「賃金計算事務の延長線上にある年末調整事務についても、法定調書の作成及び税務署への
届出を除いて、社労士(法人)が行うことのできる業務です。」
と記載があったようです。そのため、問題ないと考えた社会保険労務士が年末調整を行っていたと
考えられます。

これに対し、日本税理士会連合会が平成14年に取り交わした内容と異なるとして申し入れを
行い、昨年、改めて年末調整は税理士業務と確認されました。

ということは、会社としては年末調整は税理士に依頼するものであって、給与計算を依頼して
いるからといって、社会保険労務士に年末調整を依頼してはいけない
ということになります。
そういう意味では、ホームページの業務案内に「年末調整」と記載されている社会保険労務士とは
付き合わないようにした方が良い
と言えそうです。


2.労働・社会保険手続き
会社が小さいので、税理士と社会保険労務士の両方を顧問にする余裕がない…
窓口を増やしたくないので、税理士に従業員の入退社手続きをやってもらいたい…
そう考える中小企業経営者もいると思います。
では、労働・社会保険手続きを税理士に依頼しても良いのでしょうか?

年末調整のところに書いた「付随業務の範囲に関する確認書」の中で
「税理士又は税理士法人が付随業務として行うことができる社会保険労務士法第2条第1項第1号
から第2号までに掲げる事務は、「租税債務の確定に必要な事務」の範囲内のものであること」
「社会保険労務士法第2条第1項第1号の2の業務(提出代行)及び同項第1号の3の
業務(事務代理)は、付随業務ではないこと」

と記載されています。

「租税債務の確定に必要な事務」と聞いても、よくわかりませんね。調べてみたところ、
「租税債務」とは、納税義務者が国または地方公共団体に税金を金銭給付すべき義務のようです。
これでもよくわかりません。

日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会の協議の経過によると、
「労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届、労働・社会保険の被保険者資格の得喪及び
保険給付、助成金・奨励金、就業規則の作成等7業務については付随業務には該当しない」

という内容のようです。

平成13年の税理士法改正により創設された「税理士法人」にも、個人の税理士と同様に、
社会保険労務士の業務を付随業務として行うことができるようにするための社会保険労務士法
施行令の改正をしたいとの申し入れに対して、前述の内容を条件に含めた形で覚書が交換されたと
いうのが経緯のようです。

租税債務の確定…つまり、労働保険料や社会保険料を計算するのはいいが、届出はしてはダメ
という内容のようですね。

であれば、最初から社会保険労務士に依頼した方が早いし、税理士に計算をしてもらったものの、
届出は自分で行うなんてバカバカしいですね。

色々聞いていると、税理士が労働・社会保険手続きを行っているケースはかなり多いようです。
どうやら、社会保険労務士法では無償なら問題ないと規定されているようで、
契約書には記載しないものの、顧問料を高めに設定して、実質的に業務内容に含めているのが
一般的だそうですが、中には堂々と追加報酬を請求してくる税理士もいる
ようです。
社会保険労務士の知人が言うには、手続きの内容が間違っているケースも多いとのことです。
サービスならともかく、追加報酬まで払った上で、間違った手続きをされるのは悲惨ですね…

会社側の事情で税理士に頼むならともかく、税理士側から「手続きも引き受けます」と言ってきた
場合は、その税理士とは付き合わない方が良さそう
です。


3.給与計算
給与計算については、特に資格が必要な業務ではないため、会社の状況に応じてどこに依頼するか
決めれば良いと思います。選び方についてはこちらの記事に記載してあります。


税理士も社会保険労務士も、一般の人からみたら「専門家」ですし、依頼できる業務の種類も
曖昧で難しいですが、直接質問をしてみて「それは社会保険労務士業務です」「それは税理士
業務です」とはっきり言ってくれる人と付き合うようにした方が、余計なトラブルに
巻き込まれずに済みそうです。
posted by 気まぐれなFP at 14:13 | 資格 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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